WSP

Q&A

東日本大震災における、ステンレス鋼製角形配水池の被害について教えてください

A1) はじめに

当協会では,国内における初のステンレス角形配水池の設計指針として,2010年3月にWSP073-2010「ステンレス鋼製角形配水池設計指針」を制定・発刊しました。東日本大震災の発生当時,東北地方には主に6箇所のステンレス角形配水池が稼動中でしたが,2009年に建設された配水池1池を除き,それ以外の配水池では同設計指針の内容が必ずしも反映されていない施設でした。また,それらのうち3基は国内で最も震度が大きかった宮城県栗原市に設置されており,余震を含む複数回の激震に曝されました。以下では,これらのステンレス角形配水池に関する被害を簡単に紹介します。

A2) 主な配水池の設置箇所

東北地方におけるステンレス角形配水池の設置箇所を図-1に示します。

地震被害状況図-1 主な角形配水池設置箇所

A3) 被害状況

被害状況を表-1に示します。

表-1 配水池被害状況
設置箇所 被害状況
1 無被害
2 無被害
3 無被害
4 中間補強帯に亀裂・微小漏水
5 無被害
6 無被害

4については,本震の際(震度7)では外観上被害がありませんでしたが,およそ1ヶ月後に発生した4/7の余震(震度6強)にて,中間補強帯の溶接部1箇所で亀裂が発生し,微小漏水が発生しました。しかしながら,軽微な漏水であったため,当面の水運用に支障はありませんでした。

同配水池が被災した理由としては,現在と当時の材料の耐力値評価や構造計算方法の差異のために,側板等における部分的な板厚不足や内部補強材の不足等があったためと考えられます。同配水池は,現行の設計指針で耐震照査を行い,部材補強等の耐震補強を行う予定です。

A4) おわりに

角形配水池は,円筒形配水池に比較すると構造的には不利な形状ですが,限られた敷地の有効活用・メンテナンスフリーの観点から,近年,特にステンレス製配水池の採用が増えております。

東日本大震災では,本形式と異なる「パネル式(片面溶接式)」のステンレス製配水池に数多くの被害事例が見られましたが,ここで紹介したステンレス角形配水池(全溶接式)については,1例の微小漏水を除き無被害でした。

さらに現在では耐震設計に配慮したWSP073-2010が制定されており,本設計指針に基づいて建設されたステンレス鋼製角形配水池は十分な耐震性を有するものと考えられます。

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