Q&A
水輸送用塗覆装鋼管の現地自動溶接について知りたいのですが?
水輸送用塗覆装鋼管の現地溶接は通常アーク溶接法で行います。米国では1930 年代にアーク溶接 法が開発、実用化されていました。溶接の自動化・機械化の試みも1960 年頃から始まり、半自動や自動 のマグ溶接が行われていました。わが国では高度成長期の1970 年代になると、水量確保のため水輸送 用塗覆装鋼管は中大口径・厚肉化し、現地溶接工事は、溶接時間の短縮、継手品質の安定化、熟練作 業者不足と高齢化対策、作業環境の改善などが課題となりました。課題解決のため、現地溶接の自動 化・機械化、さらに知能化は、その時期を境に、溶接材料、溶接機器などの急速な開発と共に大きく進展 しました。特に今日、自動溶接の主流がマグ溶接及びミグ溶接になったのは、全姿勢溶接に適する溶接 ワイヤ、アークの安定性が確保できる制御電源の開発成果によります。
現地溶接の自動化は初期のCO2 半自動溶接にはじまり、マグ溶接、ミグ溶接、ティグ溶接を用いた自動 溶接、さらに小径管及び大径管用の開発が行われてきました。同時に、現場での使用結果とその時々の ニーズに対応すべく、軽量化、小型化、高能率化、品質安定化に向けた改良・改善が続けられました。現 在、水輸送用塗覆装鋼管の現地溶接に適用されている自動溶接工法は大きく分類して、単層盛と多層 盛の2 種類があります。単層盛溶接法はエレクトロガスアーク溶接法及びエレクトロスラグ溶接法、多層 盛溶接法はマグ溶接法またはミグ溶接法、一部にティグ溶接法が用いられています。小中口径管の溶 接では、細径ワイヤ使用のマグ溶接法やティグ溶接法の自動溶接が実用化され、能率向上を図るため 狭開先で溶着量を少なくする工夫がなされています。800A 以上の管では、マグ溶接法(多層盛)や、高 電流で溶着量の大きいエレクトロガスアーク溶接法及びエレクトロスラグ溶接法(単層盛)が各々の特徴 を生かし、大径管の管内面高能率自動溶接法として実用化されています。
自動溶接の特長は、
- 溶接作業時間が短縮されること、
- 溶接工の技量に左右されにくく安定した品質が得られること
- 滑らかできれいな仕上がり面が得られること
などです。
しかしながら、施工条件によっては必ずしも期待通り にならず、開先精度の許容範囲が狭いことや、機器の移動・据 付、溶接装置の管理、溶接準備作業の煩雑さなどに多大な時 間を費やすなど、作業効率の大幅な向上とコスト低減が期待で きない場合がありました。また、オペレーターは手溶接士と同様 に技能依存度が高く、習熟が必要で、脱技能とはいえない面も ありました。
このような課題を解決するため今日では、溶接装置をマニュア ル制御からプリセット制御、インプロセス制御へ移行し、特に、 開先状況のセンシング・条件選定から溶接中の状態をセンシン グし、条件調整を行って品質の安定化を図っています。能率向 上・コストダウン対策として、更なる狭開先化、高電流化による 溶着量の減少及び溶着速度の増大化や、溶接トーチを複数同時使用することで、溶接作業時間の短縮 化を行っています。
将来的には、自動溶接機本体及び付属設備の簡易化、軽量化、省人化、さらに、無人化(ロボット化)さ れた高機能自動溶接機の開発・研究がなされ、本来の全自動溶接の適用が期待されます。
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- 水輸送用塗覆装鋼管内面現場自動溶接 (PDF)
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