Q&A
C/Sマクロセル腐食とはどのような腐食ですか?
コンクリート/土壌マクロセル腐食(C/Sマクロセル腐食)とは,鋼管が弁室や水管橋の橋台のようなコンクリート構造物を貫通して土壌中に布設されている箇所で発生するマクロセル腐食のことで, 次のような特徴があります。
- ほとんどの場合, コンクリート構造物から10m以内程度の土中埋設部に発生する。
- 腐食は外面塗覆装に損傷のある部分から進行し, すり鉢状の孔食ができる。
- 腐食速度が非常に早く, 管の布設後数年で貫通腐食が生じるケースが多い。
C/Sマクロセル腐食の発生機構は, 以下のとおりです。
図-1 に弁室貫通部の状況を示しますが, このような配管では, コンクリート(アルカリ雰囲気)中の鋼管の腐食電位は-0.2 ~ -0.3V(以下,電位表示は飽和硫酸銅電極基準で示します。)であるのに対し, 土壌中の鋼管の腐食電位は-0.5 ~ -0.8Vであることから, 両者の間に電位差が生じます。このとき, 埋設土壌中の鋼管の外面塗覆装に損傷があり, 土壌と電気的に導通していると, この電位差が駆動力となり, コンクリート中の鋼管がカソード, 土壌中の鋼管がアノードとなって後者が腐食することになります。特に, コンクリート構造物中で鋼管が内部の鉄筋に接触していると, カソードの表面積がアノード(埋設管外面塗覆装の損傷部:ピンホールのように極めて面積が小さい)に対して相対的に過大となるため, 腐食速度を著しく大きくし, 場合によっては 2 ~ 3mm/年もの腐食速度となることもあります。
図-1 コンクリート/土壌マクロセル腐食の原理
C/S マクロセル腐食が, コンクリート構造物の近傍でのみ発生する理由は, 次のとおりです。図-2 には, コンクリート構造物から土中に向けて配管された各種鋼管の管対地電位(土壌と管との電位差)を計測したデータを示します。コンクリート構造物と土壌の境界部では, 管対地電位が高く(縦軸はマイナスが上方向に表記), コンクリート構造物から離れるに従って, 管対地電位が低下していく傾向がうかがわれ, 約10m程度の離隔をとると, ほぼ埋設管の管対地電位に収束することがわかります。C/Sマクロセル腐食は, 管に生ずる電位差が原因となって発生する腐食のため, コンクリート構造物から10m以上離れた位置では, このタイプの腐食が発生し難くなる訳です。
図-2 鋼管の管対地電位分布
C/Sマクロセルを防止するためには, 以下の方法が有効です。
- コンクリート構造物中の鉄筋と鋼管を電気的に導通させない。
- コンクリート構造物近傍の埋設管では外面塗覆装の損傷を起こさないようにする。
現在では, C/Sマクロセル腐食のメカニズムが明らかになったことから, 設計・施工時にはコンクリート構造物中の鉄筋と鋼管を絶縁するような対策が採られていますし, 外面塗覆装については, 耐衝撃性・電気絶縁性能に優れたプラスチック被覆に全面的に切り替えられていますので, C/Sマクロセル腐食が発生するおそれはありません。