Q&A
水道用鋼管にはA種管とB種管がありますが, どのように決められているのですか? また, 呼び径に付ける符号でA, Bがありますが, 何の意味ですか?
1. A種管とB種管について
アーク溶接鋼管はベンディング・ロール法, UOE法,スパイラル造管法などにより鋼板および鋼帯から管に成形され, 溶接方法としては主にサブマージドアーク溶接法または被覆アーク溶接法が用いられます。また, 鋼管は注文生産品のため, 管厚は自由に設定し, 製作することが可能です。
従来, 管の厚さについては寸法を限定した1種類のみの規定でしたが, 昭和62年9月に改正されたJIS G 3443「水輸送用塗覆装鋼管」から, 使用条件に応じた適切な厚さを選択できるように2種類の標準厚さのシリーズが規定され現在に至っています。
水道管の標準的な埋設条件を想定して, STW 400の鋼種の管厚は, 2種類の標準厚さのシリーズ(A種, B種)を規定しています。呼び径350 A~600 Aの範囲については製造上の制約により,また, STW 290, STW 370については類似の鋼管JIS規格に合わせたものとして厚さを1種類に規定しています。
A種管とB種管の区別は呼び管厚比(D/t)が, Aシリーズで114, Bシリーズで133を目安としています。
ただし, 呼び径350~600Aの範囲のBシリーズについては製造上の制約により規定しないことにしています。
埋設管路における管の厚さの選定に際しては, 内圧(静水圧および水撃圧)による円周方向応力度, 外圧(土圧,トラック荷重等)による曲げ応力度および変形率のそれぞれが許容値以内となるように, 選定する必要があります。
下記の条件で,土被りに応じた管厚選定例を示します。
【管厚選定例(矢板施工の場合)】
- 管の基礎支持角:90°
- 土の反力係数:1.4 N/mm2
- 土の単位体積重量:18 kN/m3
- 鉛直土荷重:垂直土圧公式
- トラック荷重:T-25トラック2台
- 最高許容圧力:水撃圧0.5 MPaを含む
- 許容変形率:5 %
詳しくは,WSP 030「水道用鋼管の管厚計算基準」の選定例を参照してください。
土被り (m) | 1.2 | 1.5 | 1.8 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高許容 圧力 (MPa) |
1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 | 1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 | 1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 |
↓呼び径(A) / 鋼種→ | 290 | 370 | 290 | 370 | 290 | 370 | ||||||
80 ~ 300 | - | - | - | |||||||||
350 ~ 600 | A | A | A | |||||||||
700 ~ 800 | B | B | B | |||||||||
900 ~ 000 | A | A | A | |||||||||
1100 ~ 1200 | A | A | A | |||||||||
1350 | A | A | A | |||||||||
1500 ~ 1650 | A | A | A | |||||||||
1800 ~ 2000 | A | A | A | |||||||||
2100 ~ 2900 | A | A | A | |||||||||
3000 | A | A | A |
土被り(m) | 2.1 | 2.4 | 2.7 | 3.0 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高許容 圧力(MPa) |
1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 | 1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 | 1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 | 1.2 | 1.5 | 2 | 2.5 |
↓呼び径(A) / 鋼種→ | 290 | 370 | 290 | 370 | 290 | 370 | 290 | 370 | ||||||||
80 ~ 300 | - | - | - | - | ||||||||||||
350 ~ 600 | A | A | A | A | ||||||||||||
700 ~ 800 | B | B | A | A | ||||||||||||
900 ~ 000 | A | A | S | S | ||||||||||||
1100 ~ 1200 | A | A | A | S | ||||||||||||
1350 | A | A | S | S | ||||||||||||
1500 ~ 1650 | A | A | A | S | ||||||||||||
1800 ~ 2000 | A | A | S | S | ||||||||||||
2100 ~ 2900 | A | A | A | S | ||||||||||||
3000 | A | A | A | A |
*1) 鋼種欄の数字はSTW290およびSTW370を示す。
*2) 呼び径80~300はA種,B種の区別はない。
*3) 表中の「英字」は,STW400のAシリーズおよびBシリーズを示す。
*4) 表中の「英字S」は,Aシリーズの管厚を超える場合を示す。
なお,Sについては, 受け渡し当事者間の協議による。
2. 呼び径のAとBについて
水道用鋼管の径を決める方法としては, まず内径を決め(許容差を含む),その後管厚(許容差を含む)を外径側に決めていく方法(この方法で決められた口径を「ミリサイズ」と呼びます)と, 反対に外径をまず決めてから(許容差を含む)管厚(許容差を含む)を内径側に決めていく方法(この方法で決められた口径を「インチサイズ」と呼びます)がありました。現在は外径規定のインチサイズのみとなっています。
呼び径の数字の後ろにA, Bと並列で表記される符号は, JIS G 3452, JIS G 3454などの鋼管のみの規格(塩ビ管などで呼び径の後にAという表記はありません)で, それも直管だけに限ります。 Aはミリ表記, Bはインチ表記です。
なお, 口径の数値はあくまでも「呼び径」なので, 実内径とは異なります。例えば, 15Aなら1/2B, 25Aは1Bです。