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Q&A

溶接後の非破壊検査はどのように行われるのですか?

現地溶接部の品質検査については, 試験片を用いた引張試験のようないわゆる破壊検査の実施が困難であることから, 1.外観検査と 2.非破壊検査の併用を行うのが一般的です。

主な非破壊検査方法としては, 1.放射線透過試験(JIS Z3104)と超音波探傷試験(JIS Z3060)による方法があります。通常は放射線透過試験が行われますが, 布設環境等の制約から超音波探傷試験が用いられることもあります。放射線透過試験および超音波探傷試験は,どちらも溶接部の内部欠陥の有無とその大きさを調べる非破壊検査方法です。

1. 放射線透過検査( RT )の方法
放射線透過試験は被検査部(溶接部)を挟んで片方に放射線源を, もう一方にフィルムをセットして撮影することにより, 内部欠陥の位置や大きさを調べる方法です。図-1 に放射線透過試験の原理を示しますが, 放射線透過試験では, 被検査部を透過した放射線量の差により感光したフィルムの濃度に変化が現れるため, 欠陥箇所の位置や種類, 大きさを視覚的に判定できるという特長があります。放射線源とフィルムは, 管を介してそれぞれ管の外側と内側に配置するのが一般的ですが, 口径800A未満の管の場合には, それぞれを管外に配置して, 検査する方法が採られます。

図-1  放射線透過試験( RT )の原理
図-1 放射線透過試験( RT )の原理

鋼管の現場溶接部の撮影方法および適用口径については, 表-1に示すとおりです。また, 図-2には内部線源撮影方法を, 図-3には二重壁片面撮影方法をそれぞれ示します。 表-2 には, 発生するキズとX線透過像の例を示します。

表-1 鋼管現場溶接部の撮影方法および適用口径
撮影方法 概  要 適用口径
内部線源撮影方法 X線源を管の内部に置き,管の外側にフイルムを取り付けて撮影 800A以上
内部フイルム撮影方法 X線源を管の外部に置き,管の内側にフイルムを取り付けて撮影 800A以上
二重壁片面撮影方法 管の内部にX線源またはフィルムを置けない場合で,X線で管壁を二重に透過して撮影 80A~800A未満

図-2   内部線源撮影方法
図-2 内部線源撮影方法

図-3  二重壁片面撮影方法
図-3 二重壁片面撮影方法

表-2 発生するきずとその放射線透過像の例
表-2 発生するきずとその放射線透過像の例

(2)超音波探傷検査( UT )の方法
超音波探傷試験は, 溶接部に超音波を発生させる探触子を直接当てて, その反射波を検知することで, 内部欠陥の位置と大きさを調べる検査方法であり, 図-4 にはその原理を示します。

図-4  超音波探傷検査( UT )の原理
図-4 超音波探傷検査( UT )の原理

超音波探傷検査の原理は,魚群探知器や「やまびこ」と同じであり,被試験体に超音波を発生する探触子をあてて振動波を与え,内部に存在する欠陥からの反射波を検知することにより,欠陥の位置と大きさを測定する方法です。X線検査と異なり,人体に対する影響を考慮する必要がないため,医療分野でも一般によく利用されています。 健康診断における腹部の検査もこの方法で行われています。

超音波探傷検査は,上記の原理で行われますので,鋼表面が露出している状態であれば,管の外面または内面のいずれからでも検査が可能です。また同様に埋戻し後の内面からの検査についても特に問題なく実施できます。ただし,ステンレス鋼管については,超音波探傷検査の適用管種から除外されていますので注意が必要です。

なお,詳細については,WSP 008「水道用鋼管現場溶接継手部の非破壊検査基準」を参照ください。

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